芦生の森トレッキング
先週土曜日、畑仕事もせずにトレッキングツアーに出かけました。
場所は京都府南丹市美山町、茅葺の家が軒を連ねる集落「かやぶきの里」で有名なところです。
この美山町の東側、すぐに福井県や滋賀県の県境がある辺りにあるのが京都大学の研究林、いわゆる芦生の森。研究林となっているだけあって貴重な自然が残る森なので一般の人は立ち入ることができないのですが、地元のガイドと同行するガイドツアーがあり、これに参加することで森に入ることができるのです。
ツアーで用意されているコースは全部で5種類。この日はその中の「下谷・ブナノキ峠」コースでした。(日によって行くコースは決まっています)
朝9:20に美山町事前文化村・河鹿荘という施設に集合し、そこからマイクロバスに乗って芦生の森のケヤキ峠というところまで移動。ここがトレッキングのスタート地点になります。
まずはケヤキ峠からブナノキ峠までの往復を歩きます。
この日は明け方まで雨が降っていて、朝には雨はやんだものの山には霧が立ち込めているような状況。ひんやりと湿った空気の中、時に一列に、時に塊となって山を登ります。
随時ガイドが見つけた草花や景色、動物の活動の跡などを説明してくれるので、歩くペースはかなりゆっくりめ。あまり体力のない年配の方でも十分に歩けると思います。
標高959メートルのブナノキ峠で少し休憩した後、少し寄り道をしながらケヤキ峠まで戻って、ツアーについてくるお弁当で昼食を取りました。
午後はケヤキ峠から先に下っていきます。
由良川の源流の1つという流れに沿うように車が通れるような道を歩きます。
綿菓子のようなモリアオガエルの卵(残念ながらモリアオガエルそのものには出会えず)、杉の木の先端で鳴くルリカケス、通常の紫陽花のような大きなガクで虫を呼べないかわりに甘い香りを発するコアジサイなど、普段なかなか目にできないものばかりで本当に興味深く楽しい。
この由良川の源流の1つが、その流れる谷そのものの名前でもある「下谷」であるらしい。
下谷の流れは湿地帯のような雰囲気ですが、歩いていると道からその流れの方に降りていく小道がありました。このあたりはトチノキ平保存林と呼ばれていてトチの巨木が固まって生えています。
空は明るくなっていたのですが、この林に入るとトチの葉が頭上を覆い、ところどころ太いトチの柱で支えられた緑のドームの中にいるような気がしてきます。トチの幹や枝はコケに覆われ、濡れた緑が神秘的な雰囲気。
再び流れを超えて道に戻りしばらく歩くと、道がちょっとした広場のように広くなり杉の大木が何本も生えている宮の森保存林というところにでます。ここはかつてこの森に暮らしていた森の民が小さな社を建て、信仰の対象としていた場所。今は社は森の中の違うところに移されたそうです。
ここで小休憩。
流れに沿ってさらに歩き、またもや流れを渡ったところに今度はこの芦生の森で実測されたものとしては最も太い幹を持つ下谷の大カツラがあります。その高さはおよそ40メートル。14階建のマンションくらいの高さがあるそうです。かつては幹を触ることもできたそうですが、昨年秋から調査のために木の周囲にロープが張られていて今は間近まで近づくことはできません。
いつか調査が終わったら、この木にも触れることができるのだろうか……。
三度道に戻りさらに歩いていくと、流れは湿地というよりはしっかりと川と呼べるような形になり、やがて道の先の方から別の流れ(上谷)と合流、ここで名前を由良川と変えて、道から遠ざかっていくように流れの向きを変えていきます。
その由良川が流れる方向に進めばやがて滋賀県に至るようですが、今回は向かい合うように流れてくる上谷の方にそのまま進みました。
道はやがて盆地のように開け、そこには朝に乗ってきたマイクロバスが今度は森から我々を送り出すために待ってくれていました。
約7キロメートル、時間にして休憩などを含めてトータル5時間ほどのトレッキングはここがゴールでした。
今回ラッキーだったのは、前日まで雨の予報だったのが明け方には雨があがってくれたこと。
雨の中を歩かなくて済んだというだけではなく、雨に濡れた森という美しい非日常の空間を体験することができました。これはなかなか狙って行くことが難しいタイミングだと思います。
ガイドの方曰く、やはり秋の紅葉は美しいとのこと。
次は是非とも秋の紅葉の季節に来てみたいものです。